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第2回 野口聡一さん 宇宙飛行士

2008年1月5日

インタビュアー 丸山貴宏

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野口聡一さん
  • PROFILE
    野口聡一(のぐち・そういち)
  • 1965年神奈川県横浜市生まれ、宇宙飛行士。
  • 東京大学大学院修士課程修了後、1991年に石川島播磨重工業に入社。航空宇宙事業本部に所属し、ジェットエンジンの設計及び性能試験業務を担当。
  • 1996年にNASDA(現JAXA)が募集していた宇宙飛行士候補者に選定されて入社。NASAが実施する第16期宇宙飛行士養成コースに参加。
  • 1998年にNASAよりミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者)として認定。ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センターにおける基礎訓練コースに参加。
  • 2001年、スペースシャトルの搭乗員に任命。2005年7月26日から8月9日、スペースシャトル「ディスカバリー号」によるミッションに参加。スペースシャトルの安全確認のため、打上げ時の外部燃料タンクのビデオ撮影を行うとともに、3回の船外活動のリーダーとして活動。3回の船外活動の延べ時間は20時間5分。ディスカバリー号は13日21時間32分の飛行後、カリフォルニア州エドワーズ空軍基地に着陸した。
  • 2007年、国際宇宙ステーション長期滞在クルーのバックアップクルーに任命され、現在訓練中。
Next update 野口聡一氏
新たなステージに挑む魅力

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急変と、先が見えない不安の中で

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「きぼう」への、さらなる挑戦

2008/1/13

急変と、先が見えない不安の中で。

宇宙開発事業団入社後、アメリカNASAの宇宙飛行士養成コースに参加。ミッションスペシャリストの認定を受けるまで、様々な訓練をして自分のスキルを高めていった野口さん。そしていよいよ、2001年7月に打ち上げが予定されていたスペースシャトル・エンデバー号への搭乗が決定する。しかし、打ち上げの延期があったり、搭乗シャトルの変更があったりしたのち、さらなる急変が野口さんを待ち受けていた。2003年2月、コロンビア号の空中分解事故によって、すべてのスペースシャトル打ち上げが凍結されることに。いつになったら夢の宇宙へ飛び立てるかわからない不安の中、それでも野口さんは、諦めなかった──。

「夢を実現する可能性が低くなったからといって、ここで諦めてしまったら悔いが残る」

丸山:
宇宙飛行士の候補者にはなれても、実際に宇宙へ飛び立てるのはその中の一部。候補者になりたての野口さんには、もちろんまだ実績も経験もない。転職後、大きな不安もあったと思うのですが。
野口:
「自分自身の能力をアピールするにしても、実績がなければ、評価してもらえません。もちろん最初は、できることも少なければ、自信も持てませんよね。そんなときは、やる気だけはある、それだけでもいいと思うんです。そして、自分を厳しく見つめて、立ち位置をきちっと把握し、そこから先に進むにはどういう勉強が必要なのかを考えることではないでしょうか。僕の場合、候補者に選ばれてからNASAで訓練するだけでなく、ロシアにも滞在して勉強しました。まだ西側の宇宙飛行士でロシア式の船外活動訓練をした人は珍しい時代で、しかも新人飛行士が突然星の街に乗り込んで来たわけですから、 これにはロシアの宇宙関係者も驚いたと思います。でもその経験が、後々活かせたということがありました。何が幸いするかわからないけれど、大切なのは、情熱なのかなと。情熱をもって、前向きに、積極的に仕事に向き合ってさえいれば、評価はあとからついてくるものですから」
丸山:
コロンビア号の事故があり、スペースシャトル打ち上げが凍結され、もうすぐ宇宙へ飛べるはずだったのに、先がわからなくなってしまった。その後2年間以上、シャトルが打ち上げられない歳月がつづいたのですが、その時期には多くの宇宙飛行士が退職したと聞きましたが。
野口:
「アメリカ人のドライさというのもあると思うんです。何かを身につけるのも早いけれど、それを捨ててしまうのも早いというか。たしかにあのときは、宇宙へ飛ぶという夢を持ち続けることのリスクもあったと思います。そのまま訓練しながらシャトル打ち上げ凍結解除を15年も待っていたけれど駄目だったとか。でも、僕はそのとき、夢を実現する可能性が低くなったからといって、ここで諦めてしまったら悔いが残る、そう思ったんです。だから、辛抱強く待とうと。希望的観測で、急に明日、凍結が解除されてすべてが好転すると期待していました。それがなかなかそういうことにはならなくて、最後は、もういいや、どれだけ待っても、このまま頑張ってみようと覚悟しました。そう決めたあたりで、打ち上げ再開が決まったんです。苦しい状況では、余計なことを考えず、打ち上げの日に備えて自分ができることをする、目の前のことだけに集中する、それだけを心掛けていました」
丸山:
困難にも負けないだけの夢、それに傾注できる情熱。今、転職を希望している人の中には、まだそうしたものが自分自身の中には明確には芽生えておらず、逆にそうしたものを求めて新たなフィールドへ飛びだしてみたいと思っている人もいると思います。そうした人々へ、アドバイスをいただけますか。
野口:
「自分の将来の輪郭を描いたときに、25歳の自分が望んでいた像と、35歳の自分が望んでいた像とで違ってしまう。そうしたことがあって当然だと思うし、逆に変化を怖がってしまうということもあるかもしれません。しかし、周りがみんな転職しているからとか、周りがみんな転職せずに残っているからとか、そんなふうに目標が不明瞭だと、自分の人生まで曖昧なものになってしまうと思うんです。そのとき、そのときで、ぶれてしまうことはあるにせよ、自分はこうありたい、そういう目標を描いてみて、まずは現実の自分と理想の自分とを線で結んでみる。その目標のために、転職が必要かどうかを考える。その線が結べない転職なら、ただ環境を変えても意味はないですよね」

<来週につづく>

構成/平山譲

NEXT 1月13日(火)
「「きぼう」への、さらなる挑戦。」

「宇宙への旅」が実現し、夢を達成された野口さんはまた新たな挑戦へとかりたてれる。
「宇宙への旅」が実現し、
夢を達成された野口さんは
また新たな挑戦へとかりたてられる。
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